ご講演・質疑応答内容
「陳総統最近訪米の台湾外交と将来に与えるインパクト」
国策顧問 楊慶安博士 を迎えて
 
楊慶安博士ご講演
新原公司)
皆川栄治
 私は新原経営顧問会社の皆川でございます。
 先週18日にご帰台された楊慶安博士を、私の敬愛しております鐘先生よりご紹介賜りまして、講演会をお願いしましたところ、快くお引き受け頂き、本日講演会を急遽開催することになりました。

 まずは本日の趣旨を簡単にご説明致します。ご存知の通り、来年3月には関が原、天下を分けるとも言うべき総統選挙「320」があります。関が原の場合には日本の天下を分けましたが、今度の320は東アジアの運命を決定づけると言っていいのではないかと、私は考えています。中国がオリンピックを2008年に控えていますが、東アジアあるいは世界の安定を必要とするこの背景の中で、台湾がこの間に国際社会から認知を得て行くと言うのが一つの方向ですが、この選挙でどちらが勝つかによってかなり方向が変わってきます。統一派が勝てば当然のことながら中国と台湾が接近するでしょうから、当然日本企業と台湾との距離は今の状態からかなり後退するでしょう。逆に本土派が勝てばさらに台湾と日本との距離が近くなり、同時に日本の世論がかなり変わるだろうと思われます。と言いますのは、この選挙までの間にかなり中国がいろんな行動に出ることが予想されます。既に台湾憲法の改正、独立反対の声明が度重なっていますが、これからも何も言わないでじっと我慢をしていられるわけがなく、かなり強い発言が出てくると思います。そうなると本土派が優位になることは明らかですし、当然のことながら日本の世論がかなり影響を受けます。つまり中国の強圧的態度を知ることによって、日本人の民族意識が高まる結果につながる可能性があります。その結果、靖国神社、北朝鮮問題など北朝鮮、韓国、中国に対する姿勢に大きく影響します。そういう意味から今回の選挙は台湾の命運を決めるだけではなくて、日本の命運をも、その後の産業、経済、社会、政治にまで影響を及ぼす。台湾が本土派の勝利になれば、日本がしっかりした考え方を持つようになれると考えています。

 更にもう一言だけ付け加えますと、この選挙で本土派が勝てばさらに台湾の社会が変わると思います。かねがね申し上げていますが、例えばモノレール、地下鉄が出来たことなどで社会がかなり変わりました。例えば行列を作るようになったとか、エスカレータの乗り方が身についた、車のクラクションの音が減ったとか社会生活がかなり変わりました。新幹線でまた変わると思います。新幹線が出来ることによって時間の観念が確立すると思いますし、いろんな意味で世界的なマナーや社会生活に前進が見られるでしょう。この選挙で本土派が勝てば、今政治闘争で明け暮れしている台湾が本当に台湾の社会生活を、中国に負けないような革新した社会生活をつくることに集中するだろうと考えます。

 まさに陳総統がおっしゃっている知識経済時代が実現する社会です。その方向としては5つあります。1つは人の立場を良く考えて仕事の出来る社会です。つまりお客さん、上司、部下、同僚、関係部門の事を考えた仕事をする世の中になります。第2は訓練、教育が徹底した企業活動、あるいは社会生活に変わってゆきます。台湾の企業は教育、訓練が比較的劣っていますが、これが強化される時代になります。3番目には計画が重要視されます。今までよりももっともっと計画的に仕事をする社会になります。4つ目には経営者のリーダシップの強さがもっと求められます。最後は理念です。経営理念の確立が強く求められます。このような社会に変わってくると私は考えています。

 今日のご講演がこうした台湾の変革の前途を照らすものになるだろうと期待しております。ご清聴を賜りたいと思います。

 楊慶安博士のご紹介はご案内に書かせていただきましたが、主要部分をご紹介申し上げます。現在ニューヨーク州立大学の国際関係学の名誉教授で、台湾総統府の国策顧問です。1928年台南生まれです。台湾大学を卒業されまして、アメリカのコロンビア大学で博士号を取られました。1982年ではアメリカの貿易商社法の成立にご貢献され、1992年には日本の勲3等瑞宝章を日本のビジネス界に対するご貢献等で受勲していらっしゃいます。日本、アメリカで非常にご活躍の著名な先生でいらっしゃいます。

 この楊慶安先生のお話を伺うことになりましたきっかけは、私の尊敬しております鐘紹雄先生の紹介でございまして、この楊慶安先生のお話が始まります前にお話を頂きたいと思います。
鐘紹雄先生  楊慶安先生は先だって今年の1月に台湾で国防会議があった時に、かって沖縄地区司令官をされておりました佐藤守閣下を国防会議に招きたいということが決まり、アメリカの代表者サイメイケン氏に指令が出ました。サイメイケン氏は日本文が書けないので、日本留学をした兄にお願いしたところ「日本の人脈では、国防会議に招聘される楊慶安先生から案内する方がいい」と言うことになりました。その結果、楊慶安先生がFAXを佐藤守閣下に送付し、佐藤守閣下より私にFAXが届きました。こうして国防会議参加の段取りは台北からワシントンDCのサイメイケン氏へ、サイメイケン氏からは楊博士、そして楊博士より佐藤守閣下へと伝わりました。これまでに楊博士より佐藤守閣下のお付き合いはありませんでしたが、これを期に台湾でお会いし、意気投合してFAXのやり取り等お付き合いが始まりました。

 今回の陳水扁総統の訪米につきましては、楊博士は表裏共にご尽力なさり、非常にいい結果を得ることが出来ました。今後とも楊博士が、明るい台湾の将来を築くために非常にお力になられることを期待しております。今日はじっくりお話を頂きたかったのですが、明日台湾を離れるということで、台湾上層部との予定が急遽入り、6時までとなりましたが、どうぞご了承下さる様お願いいたします。

 楊慶安博士は、我々台湾人にとって心強いリーダーです。
楊慶安博士  始めまして、皆川社長、鐘さんよりご紹介頂きました楊です。今日は演説ではなくて手軽な会話と言う形でお話させて頂きたいと思います。私はアメリカが長くて、日本語の演説はあまりしたことがありませんので、皆さんと会話するという形にしましょう。

 皆川社長にこの前お会いしたとき「何かお話をして下さい」と依頼を受けました、台湾の現状と将来についてお話と言うことでしたが、ご承知のとおり2ヶ月前に陳水扁がアメリカを訪問しまして、その時3日間毎日一緒にいました。そこで「陳水扁のアメリカ訪問と台湾の外交、来年の選挙に対するインパクト」と言うトピックを選びました。

 その前に、台湾の悲哀についてお話します。ご承知の通り李総統が司馬遼太郎との対談の時に台湾の悲哀について語りましたが、僕にとっては台湾の悲哀は同時に誇りです。台湾の悲哀と言えば結局日本が負けて引き揚げてからです。あの時中学の4年でしたが、学校では日本語を話し、家では台湾語でした。その後、蒋介石が来て北京語を改めて習わせました。しかも、その北京語はご存知の通り浙江省、山西省、山東省、四川省等のもので、標準な北京語ではなくめちゃくちゃでした。白色テロ228事件後、いじめられました。多くの台湾大学を出たエリートが海外に出ました。僕もそのうちの一人でした。アメリカに行ったら飯を食うために英語を勉強しました。だから僕は書く時は日本語、演説する時は英語です。台湾の悲哀、僕等は日本が負けたおかげで北京語、英語を学びました。日本人で北京語、英語を話せても、書いて文字に出来る人はあんまりいないでしょう。これは台湾の誇りです。海外において台湾のために広報をしているだけではなくて、自分で話すのは恐縮ですが、日本の福田官房長官、椎名参議院議員といったいろんな国会議員と懇意なって台湾とってお役に立てることに私はすこし誇りを持っています。

 昔は台湾よりも日本に行くことが多かったのですが、ここ7〜8年は年2回台湾、日本にも年2〜3回帰ります。今回台湾に帰ってきて、非常に嬉しかったのは、李総統に会ったことです。李総統にお会いするのはここ7〜8年ですが、そのきっかけは日本で開催された日台関係に関する会議での講演内容を時事通信社が伝えたのを李総統が見たことです。

 今回はいろんな人に会って会議にも出ましたが、実は観光もしました。台湾は、昔から麗しの国(イル・フォルモサ)として知られています。どうして昔から観光の奨励をしてこなかったか?非常に不思議に思っていますが、特に今年のSARSの後に観光の促進を強化しています。新しい海洋公園やタロコを見ました。特にタロコは大したもんですなあ、みなさん行かれたことありますか(一同頷く)。グランドキャニオンに比べたら小さいけれども、日本の10分の1しかない小さな島に、あれだけ綺麗な大理石の谷があるというのは大したものです。また、蘭の花の庭園もすごかった。今回は、こうした観光のチャンスがあって大変嬉しかったです。僕は台湾で生まれながら台湾の歴史を良く知りません。だから、これからも台湾に良く遊びにこようと思っています。

 主題に戻りますが、正確に言うと10月30日に陳総統、閣僚、商工関係、経済関係の人が3日間ニューヨークに滞在しました。3年前、陳総統が初めてアメリカ経由で中南米を訪問した時には、ホテルに閉じ込められて、食事のために外出してもいいが国会議員に会ってはいけない、演説してはいけない、マスコミとの会見はいけない等制約が大変でした。去年の春、中南米に行った際のトランジットでニューヨークに泊まったときは、メトロポリタン博物館、ニューヨークの株式市場を訪問することは許されました。演説やマスコミとの会見は禁止されましたが、ニュージャージ近郊の台湾人幹部に会うことは許されました。国務省のスポークスマンはアメリカの陳総統に対する待遇は変えていないと言いましたが、事実は大変改善されました。

 国民党という難しい立場でありながら、李登輝総統は僕が次の様に書いたときに大変慶ばれました。台湾2300万、国際法の立場に立てば正々堂々とした主権独立国家である。国際法での国家承認の4条件、即ち、領土が在る、人口が在る、法治できる政府が在る、他の国と国際外交関係を結ぶ能力があるといった条件を備えているわけです。このように国家承認の4条件を持っているにもかかわらず、台湾は国家ではないと…。日本を頭ごしにして1971年に中共を秘密訪問したキッシンジャー、その後翌年にニクソンが中共訪問し、キッシンジャー、シュワルナゼが72年末に上海講和を発表したときに台湾人は一つも承認していない。にもかかわらず台湾海峡両岸の中国人は世界で1つの中国しか存在しない、かつ北京が唯一の合法政府である、そして台湾は中国の一部であると主張した。キッシンジャーとニクソンはそこまで飲まなかったが、その後、アメリカは認知すると言った。これは国際法あるいは道徳の立場に立っても、おかしい。だから一方的に台湾の将来を決めるなど、こんなインジャスティス(非道)はない。

 いずれにしろ、陳さんがニューヨークに行って、国際人権協会の今年の表彰を受けて、しかも30分の公の演説を許し、そしてアメリカ、記者に対する会見での言動や行動を許したわけです。それだけではなくて、日本政府もアメリカの台湾政策に感心をもっています。アーミテージ国務副長官が陳総統に「よくいらっしゃいました。いい旅行、活動が成功することを祈っています。」と言いました。到着してすぐにニューヨークの現役市長、前ジュリアーノ市長、国会議員を表敬訪問しました。アメリカの国会には実は台湾支持連盟があり、衆議院(下院)においては3分の1の約120名の衆議院議員が参加しています。陳総統は11月5日に20数人の国会議員とランチをし、夜にはボートに乗ってマンハッタンの島を回りました。ですから、今度の陳総統のアメリカ訪問は結果的にたいへん成功しました。アメリカの対応が改善されたのです。どうして、陳総統のアメリカ訪問が成功したか?3点ほど理由を挙げて説明します。

 まず1つ目は、国会議員に多数の有力台湾支持者が居ることです。衆議院(上院)では120名、参議院(下院)では20名ぐらいの台湾支持の有力議員がいます。議会の台湾支持、実際は20数年前アメリカが中国と国交正常化し台湾と国交断絶した時は、台湾にとっては非常にショックでした。カーターと言う男に見捨てられた。1979年アメリカの国会が大多数の議決で台湾関係法と言う国内法を議決し、カーターに押し付けた。彼は仕方なしに法案に署名をし、そして台湾関係法が成立したわけです。台湾関係法は台湾の自衛の為に自衛武器を提供する、台湾が中共に脅かされた時に大統領と議会が適宜の行動(Corporate Action)を取るものです。漠然としていますが、1996年中共がミサイルを発射した時に、クリントン大統領までが台湾の近海に航空母艦や駆逐艦、護衛艦を含め10数隻派遣しました。そして中共が手を引きました。要するに、行政府も大統領も、アメリカ国会における台湾の支持を軽視できないと言うわけです。

 2つ目は、アメリカ訪問2月前に、台湾を訪問したAIT(American Institute in Taiwan)の女性理事長が非常に台湾びいきでした。私もニューヨークで2日間一緒しましたが、私が英語を話せると分ると、非常に喜んでくれました。その彼女が非常に努力してくれたことが成功につながりました。

 3つ目に、僕等が船に乗ってマンハッタンの島を回った時に、彼女は祝辞を述べ「台湾が安全であり、皆さんが、そして陳総統が安心出来る理由は、台湾に神秘的な守護天使(guardian angel)がいるからです。それはジョージブッシュです。」とハッキリ言いました。世界貿易センターと国防総省が攻撃された2年前の9月11日の後、ブッシュの台湾に対する政策が微妙に変ってきているように見えますが、裏においては変らず支持してくれているのです。

 ニューヨーク訪問後ですが、パナマの独立100周年記念に参加し、その後コーリン・パウエル国務長官と2回会って、2度握手しました。そして簡単な会を持ちました。「何も特別なことではない」と皆さん言われるかもしれません。しかし、台湾は世界第16位の経済大国、そしてIT大国、1900億ドルクラスの外貨を保持しているにもかかわらず、国際承認を受けていないと言うおかしな状況があるのです。だからジョージブッシュと言う、台湾を守ってくれる天使が居ると言う事が陳総統がアメリカ訪問が成功した一番大きな理由です。

 では、どういうインパクトがあったか?ご想像できるとおり、911前はブッシュ大統領は無条件台湾支持でした。しかし、911以降は微妙な変化がありました。胡主席に2回会い「台湾独立を支持しない。(Don't support Taiwan's independence.)」と言いました。いつものように、中共はこれを曲解して「ブッシュは台湾独立を反対している。(oppose Taiwan's independence)」と言いました。それから、1999年から2000年あたりから「台湾の将来は平和的に解決するだけでなくて、台湾人民の同意が必要である」と言い、これに中共の圧力でもう一つ付け加えたと言う話があります。公文書を見たことはありませんが「台湾人民の同意だけでなくて、中国人民の同意も必要である」とブッシュさんが譲歩をしたようです。だから大変心配しました。しかし、今回の陳総統をニューヨーク訪問でこれだけもてなした、パウエルが2度握手したということは、国交断絶した後の台湾に対する尊重のシンボルです。東アジア担当の国務次官輔は陳総統のアメリカ訪問について質問された時に、はっきりと「陳総統が国際人権の表彰を受けたことは当然だ。と言うのは、陳総統の台湾の人権保護への寄与は大きい。アメリカ訪問は非常に良かった。(very successful)」と言いました。だから今度の陳総統に対する表敬、待遇改善は、事実上変りました。911後の米中合作危惧がありましたが、これを事実上取り消すことに寄与しました。どうしてアメリカが911後に中共との合作が必要であったかと言うと、皆さんご承知の通り、対テロ戦争、イラク戦争ですが、もっと大切なのは北朝鮮、日本にとっても危機を感じる北朝鮮の核協議に於いて、中国との合作が必要だからです。

 では、台湾と日本の関係にインパクトがあるか?について話します。僕は外務省のチャイナスクールを辛らつに批判した論文を発表してきました。遅いですが少しずつ変ってきています。小泉首相、福田官房長官、岡本行雄、シンクタンク、東大とかの良く活躍している日本の国際関係学者の考えが大分現実的になりつつある印象です。そして最近(9月)、東大の北岡教授が日本外交政策顧問の座長として纏めた報告書を川口外務大臣に提出しました。台湾問題についての報告書だけではありませんが、日台関係について文書で発表しています。正確ではありませんが、次の通りです。「民族自決の原則に沿った、台湾の自主を尊重するのは当然である。日本の近郊あるいは近隣において、経済大国であり親日のデモクラシーがあるのは日本にとって喜ばしいことである。日中関係に多少のギクシャクがあったとしても、日本の台湾政策をレビューして再構築すべきである。」という意見を出しました。

 まあ、幾ら意見を出しても、外務省の特にチャイナスクールが強いですからねえ。だけど、チャイナスクールは叩かなければいけない。この20年間ODA、中国に政府と民間の経済援助を出して、軍事大国にさせたのです。中国をして日本をおびやかす悪魔に育てたのです。これは日本の国益になりますか?しかも、中国は全然感謝していません。教科書問題、日本軍国主義と言って叩いて、靖国神社の問題、これらは中国の日本に対する明らかな内政干渉で国際法違反です。今まで日本人は日中友好を支持して甘すぎるし、感情的すぎます。中国人ほど戦略的、現実的な民族はいません。

 だから僕等台湾人は騙されました。日本統治時代、日本は必ずしも台湾人の利益だけのために台湾を建設したわけではなく、もちろん日本のため、そして台湾のために、鉄道、教育、衛生などを建設したのです。その中でも一番良かったのは法治です。日本は法治国家です。だから法治に慣れた台湾人は228の時に武器を放り出せば台湾人を保護すると言われ、信用したのです。武器を差し出したとたん協定違反し、蒋介石が基隆、高雄から軍隊を送り込み、台湾人のエリートを2万人以上殺しました。酷かったですよ。あのころは僕は大学生でした。日本人は甘すぎるんだよ。ただ日中友好「申し訳ありません、中国に侵略して…」、ところが中国人は考えている、ニコニコしてね。そして今中国が台湾の国民党、親民党と統一戦線を結んでいるのと同じように、戦後日本でも、中国が共産党だけでなくマスコミなどと統一戦線を組んだのです。中国人はご承知のとおり、国際政治に慣れているんです。日本人は島国だから国際政治に慣れていない。陳総統のアメリカ訪問に日本外務省が感心を持っています。ブッシュ政権が日本の台湾政策の再構築をスピードアップさせると思います。

 僕は日本が、国益に基づいた対韓政策、対米政策、対中政策をつくることを願っています。何も皆さんに台湾人になってくれと言っているわけではありません。親日になってください。そして日本の為に対米政策、対中政策をつくってください。それを願っています。

質疑応答

新原公司)
皆川榮治
 今朝、内田大使とお会いになったと聞いていますが、先ほどの北岡教授のパネルは台湾の交流協会までに、どの程度伝わっているのでしょうか?
楊慶安博士  それは、内田大使に聞いたほうがいいですね。今日はいろいろと意見交換があって、好感を得ました。いろいろと長い間お話をしました。ただ外務省は知っていてもなかなか進まないと思います。早くないけど、こうした提案があることはいいことです。総理官邸に外務省から出た岡本補佐官がいますが、彼も去年の秋に報告書を出しました。大使も言っていましたが、やはり日本の世論が大事です。外務省あたりが、もうすこし世論を見つめるべきだと思います。内田大使を含め外務省はエリートで立派な方です。

 しかし、特にチャイナスクール、あの阿南大使ですが、お父さんは勇気のあった軍人で戦後切腹された方です。その息子が大使になって瀋陽総領事館へ駆け込んだ被害者を追い返すということをして、信念のない発言をしていました。日本の外交には原則がないのです。

 戦前は勇気過剰、戦後は勇気不足。どうして日本人はこれだけ変ったのですか!戦前どれだけ勇気があったか申し上げると、ビスマルクの後で歴史の偉い軍略官は二面戦争をできるだけ回避しました、スターリンもそうです、ところが日本だけが陸軍はロシアを仮想敵国にして、海軍はアメリカを仮想敵国にして、そして陸軍と海軍はさらに喧嘩をして、最終的には二面戦争どころか中国、アメリカ、英国、フランス、オランダ、ロシア、インドを相手にして5〜6面戦争ですよ。しかもオーストラリアまでも攻めていこうとした。これは勇気過剰でなくて蛮勇ですよ。ところが戦後は縮んじゃってね、本当に惜しいと思いますよ。僕が望んでいるのは日本人の元気回復です。
協機工業)
北村友雄
 日本の外務省の情けなさとかイライラされる気持は私たちも同じです。ところが、来年の3月の台湾の選挙を我々が台湾のことを心配する立場から言うと、マスコミはどちらかと言えば国民党、親民党よりですが、五分五分かあちらの方が強いとのアンケート結果が出ています。それに対してかなり最近巻き返しているとは言っていますが、まだまだ超えるまでにはいっていません。私は12年台湾に居ますが、アンケート及びマスコミの報告は当らないようで結構当っていて、総論として大きく見誤ってはいません。そうなると、楊先生が日本のことを憂いて「しっかりせい!」と言うことを、私たちは今の台湾の選挙民に思うんです。私だけでなく殆どの日本人が思っているように、この台湾は陳さんにもう一度やらせて、この民主化の芽を摘んではいけないし、228事件などのようにフィルムを巻き戻す動きをさせてはいけない。陳さんの経済政策に関していろいろ意見がありますが、経済は世界の動きの中です。もう一度民進党を中心とする現政権を支えて再選しなければいけないんです。そうじゃないと、でんぐりかえります。

 楊先生が外務省をはじめとする日本に対して「情けない」と思っている同じ気持を我々が持っていることを伝えて、感想を伺いたいと思います。
楊慶安博士  まったく同感です。情けないです。

 台湾ほど気の毒な国はありません。台湾人でありながら、台湾人である誇りを持っている人が少ないです。ご存知のとおり、50数年国民党に統治され、4〜5年前までは今日のような発言をしたら殺されてますよ。それまでは口を結んでいました。僕が日米関係、貿易関係を専攻した最大の理由は、台湾のことはタッチしないためです。嘘もつきたくもありませんし。台湾人は大中華民国思想を植え付けられて、台湾語を禁止されました。

 来年の選挙は台湾にとっては関が原、勝てば元気が出ます。弱みは中共の圧力です。アメリカも「あまり中国を刺激してくれるな」と言います。前の李総統も陳さんも大変なんです。勝てば陳さんはもっと呂秀蓮みたいになります。実はさっき会ってきたんです。来年勝ったら台湾は良くなる。負けたら僕はもう帰ってこない。連戦、宋にしろ「台湾の主権独立を守る」と言っていますが、信じられません。

 今日は、日本人のことを悪くいいましたが、むしろ誉めるところはあります。日本は台湾に法治国家を作りました。

 来年、陳さんが勝ったら、彼はもっと強くなります。2008年まで何かやります。ただ、中共は国民党、親民党と組んで最大の邪魔をします。勝ったら、立法院の選挙も良くなると思いますので、是非支持して下さい。絶対勝たせなければいけない。

 陳さんにしろ民進党にしろ欠点だらけです。派閥、総統府、行政などの連携が弱い。いろいろと批判して下さい。しかし、勝てば望みがあります。だから、李登輝さんは80になっても一生懸命やっています。
摂陽企業)
岸田宗三
 中国には2008年のオリンピックと言う歯止めがあるから、国際社会上冷静になる態度を取る必要がありますが、逆に陳水扁さんは中国に遠慮することなくやればいいのではないでしょうか?そうすれば若い人も「元気があるなあ」と感じるはずです。どうでしょうか?
楊慶安博士  まったく同感です。そのためには勝たなければならない。負けたらもうダメだ。勝ったら徐々に強く出てくると思うし、僕は期待しています。
摂陽企業)
岸田宗三
 選挙に対する発言はどうですか?もっと強気でもいいのでは?
楊慶安博士  頭初、陳総統は中間路線をとり、中共に最善の敬意を払いましたが、海外に住む僕等は寂しい思いをしました。ところが、最近それを言わなくなり、一辺一国(one shore one country)を言い出して、来年はこれが選挙のテーマになると思います。彼は演説で、修正ではなく台湾に適応した新しい憲法を作り、国民投票にかけると強調しました。要するに、一辺一国、新憲法、国民投票を言った時に、僕は拍手をしました。だんだん強くなって来ました。

 来年勝つことが第一です。後は2次的、3次のことです。どうしても勝たなければいけない。負けたら、望みはないとは言わないけど、台湾は近いうちに大陸に取られます。統一戦線を引いて、日本内部の労働団体、左翼団体と組んで日本政府を叩きます。中国の欲しい政策を押し付けるでしょう。

 中国人とアメリカ人はよく似ていて、現実的で、自己主張が強いです。日本人は遠慮すぎて、アメリカに住んでいる日本人も同じです。日本文化は謙遜が美徳で、出る杭は打たれる。アメリカは逆です。「自分でラッパを吹かんといかん!(Brow your horn!)」これがアメリカ文化です。中国文化とアメリカ文化はよく似て、非常に現実的です。だから中国の女はアメリカでよく成功するんです。僕は時々日本の外交官に「アメリカ人に対しては頭を金槌で2回だけでなく、5回ぐらい叩かないと分ってくれない」と言います。遠慮してだまっていたら誉められるどころが「あいつはバカだ」と言われます。これは文化の違いです。昔よく講演した時に、質疑応答の時に日本人はだまっています。質問するのはアメリカ人です。中国人はその点、くちゃくちゃ喋っています。特に女性はしっかりしています。結婚したらね、旦那は一日中働いた上に、家に帰ったら皿洗いとおもり、12時回れば奥さんにサービスしなければなりません。
新原公司)
皆川榮治
 先生の奥様は日本人ですが、どこでお知り会いになられたのですか?
楊慶安博士  名古屋で知り合いました。私の本を見て下さい。こういう論文集を出すのはうるさいのですが、若い頃の写真を載せました。佐藤栄作、福田武夫、中曽根さんと写っています。若い頃は悪くなかったですよ(笑)。彼女に惚れられたんです…(笑)。

 僕等はアメリカに長く住んで、社会に溶け込んで、戦わざるを得ませんでした。それで日本人とたくさんお付き合いしました。帰ったら常務、副社長になる人が多いのです。

 日本人はラッキーです。戦争に負けても自分の国、政府、会社があって。僕等の場合は一番気の毒で流浪の民です。国際的孤児です。そのためにも来年陳さんに勝ってもらおうと思っています。そうなれば日本にとっても非常にいいんですよ。
東芝精密)
入野保己
 台湾に来てから5年経ちます。その間に台湾の会社は、みなさんこぞって大陸に投資をしました。その結果、失業率が上がり今は約5%と高率になっています。大陸との経済ではかなり密接なつながりが確立され、そういう状況の中で三通問題は現実的な問題になっています。私どもとしては現実的な問題のため、三通問題は早く解決したほうが台湾にとっても良いと考えますが、いかがでしょうか?
楊慶安博士  グローバル経済にとって三通がないのは不自然です。しかし、中国だけでなく台湾、日本も政治が優先です。共産党が政府、軍隊、経済すべてをコントロールしています。だから、台湾の安全を保証した政治的なフレームワークが出来れば、三通はもっとやれます。

 ところが中共の場合は、台湾を武力行使でやるか、最近はかしこくなって統一戦線、貿易と投資の相互依存による台湾経済の丸呑みをやろうとしている。実際三通であったほうがコスト効果がありますが、政治と軍隊がかかわっていますから複雑ですね。
東和楽器木業)
陳文智
 結局のところ、一般の台湾人は三通を直接やりたい。いい方法はありませんか?
楊慶安博士  先ほども同じような質問がありましたが、グローバル経済において今の状況は不自然です。財界は陳さんに圧力を相当かけています。2年前の夏に慎重な政策を捨てて、積極開放と言う政策を出しましたが、いずれもシステムが出来ていません。要するに、台湾に対する安全と政治上の保証の枠をつくれません。三通はしばらく間無理です。例えアメリカの監督の元でも出来ませんし、アメリカはしません。

 中共は日本の直接投資大歓迎です。ところが合弁、中国側が51%です。日本のテクノロジーの移転を要求しています。中国人はやはり頭いいです。自分達で作り出せるようになったら日本、アメリカは糞くらえです。

 だから、台湾の企業が大陸でどれだけ儲かったかは大きな疑問です。大抵損しています。台湾に帰ってきて「いやあ〜儲かりました」と言っていますが、そう言わないと恥ずかしいですから。
摂陽企業)
岸田宗三
 アメリカ企業は中国への企業進出をどう思っているのでしょうか?
楊慶安博士  モトローラー、ボーイングなどいろいろ入っていますが、そのうち目覚めますよ。数年前までは中国の人工衛星の打ち上げは失敗ばかりしていた。ところがロラールと言う会社が、その技術を提供し、後で問題になりました。それから中国の人工衛星産業が成功しました。金儲けもいいけど、自分の国の国益を考えるべきです。アメリカ、日本、台湾、EUこれまで沢山中国に投資、技術移転して…後で絶たれますよ。そのうちに中国は世界の大工場になるだけでなく、軍事大国になって日本を脅かしますよ。もうすでに、日本の排他的経済水域に入っていますよね。これはアメリカにとっても大変な脅威です。
新原公司)
皆川榮治
 時間も参りましたので、楊博士のご講演を終了させていただきます。この後、早めの食事を囲んで、楊博士のご退席になる迄の時間、更に交流を深めたいと存じます。楊博士、本日は有難うございました。(拍手)